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黒い頭巾越しに、合った目。
怯えた色に、顔が緩んだ。
助けてくれと聞こえたが、気持ちのまま、引き金を引いた。
「……正当防衛だとしても、……俺は、四人も」
「竹山さん! 止めなさい!」
花房医師の声に、十年前の、イルカショーのプールから戻ってくる。
体は冷たいが、額に汗をかいているのに、竹山は気づいた。
「……竹山さん、辛いと感じた時は、いつでもここに来なさいって言ってるよね」
目の前の顔が、真剣な表情を浮かべている。
「……こんな状態で、……あいつとの約束、守れないでしょう」
竹山は、無理に顔を歪めて言った。
少しして、ぼそりと返ってくる。
「……それでも、関係を切らなかったのは、どうして?」
最近、皆に聞かれる質問。
竹山が、答えを、はっきりと言う。
花房医師は、小さな目を大きくし、顔を緩めた。
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