第4話 カタメの世界 2

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※ 南港から湾岸線を走り、摩耶で高速を降りると、道路を走る車の数はずい分少なくなる。 久しぶりの神戸に、杉田は何も感じなかった。 JR三宮の駅を過ぎ、リリコの指示通り、生田新道沿いの駐車場に車を停める。 「お腹、空いてないですか」と、車を降りてから聞かれた。 一時間前、リリコが電話を切ってすぐ、杉田の携帯が震えた。 松波から、神戸に一緒に行く様に言われ、高速道路に乗った。 車内はずっと無言で、久しぶりに声を聞いた気がした。 「大丈夫です」と返すと、リリコは携帯を取り出す。 「着きました」とだけ言って通話を切り、背中を向けて進み出す。 信号を渡り、八時を回り、閉店している東急ハンズの前を通る。 自分と同じ歳ぐらいの、若いサラリーマンの集団とすれ違った。 呑んできた後だろう、楽しそうに、顔を赤くして笑っている。
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