オキクの復讐

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 灼熱の太陽のもとでの応援で噴き出た汗が、 白いシャツを濡らし素肌を浮き彫りにする。 しかし不思議と高校生の汗は、 透明感がある。 夏の甲子園大会予選。 東東京大会も日程が進み、 あと1試合勝てばベスト16。 観客席から球児たちを見守る生徒達の応援も当然熱を帯びてくる。 駒場学園高校は、 2点のビハインドで9回の表を迎え、 最後の頑張りで2アウトながら満塁の好機を得た。 神宮第2球場観客席の5599人の目が、 投手とバッターに注がれる中、 ひとりの女子生徒だけがブルペンを注視していた。 正直に言うとこの女子生徒は、 試合の開始から今まで、 ブルペンから目を離していないのだ。 ブルペンでは、 味方の逆転を信じひたすら投球練習をおこなうバッテリーがいた。 しかも彼女の注視の先は投手ではなく、 広い背中に12番を背負った捕手なのである。
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