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鋭い金属音とともに白球がライト方向に打ち出された。
全選手が、
全観客が、
そしてブルペンのバッテリーさえもが投球をやめて白球の行方を追っている最中にも、
女子生徒は12番の背中を見つめていた。
やがて白球は大きな弧を描いて、
ライトの外野手のグローブに収まった。
ライト側のため息とレフト側の歓喜が渦巻く中で、
球児たちは全力走で球審のところへ集まった。
整列しながらも、
プロテクターを付けたままの12番は、
涙にくれる11番の背に優しく手をかける。
球審の『ゲーム!』の声とともに、
駒場学園高校球児の夏が終わった。
しかし、
12番を注視する女子生徒にとっては、
その球審の声が開始の合図ように聞こえてならなかった。
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