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「りの」
「触らないで! 怒ってる! めちゃくちゃ怒ってるよ、私、がお―だよ!」
慌てて顔を隠そうとしたら、そのまま廊下の壁に押し付けられた。
誰が来るか分からない放課後の、一年棟の廊下。
お兄ちゃんが色々退治してくれたから――そうそう人は来ないけれど。
「つばさく、痛――」
「泣かないでよ」
ぺろりと涙を舐めると、不貞腐れた様な泣きだしそうな、複雑な顔をしたつばさ君が此方を見た。
「キス、していい?」
唇に触れてきたつばさ君が、可愛いのにドキドキするような甘い声でそう尋ねてきた。
私が頷くと、彼は私の瞼をそっと指先で閉じた。
「りのの為だよ。それじゃなきゃ、こんな馬鹿みたいな賭け、しないんだから」
重なった唇は、お互い冷房の入った教室のせいか、かさかさだった。
「上手いと思う?」
あざとくつばさ君が聞いてきた。
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