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あの日の、――あの日の記憶がフラッシュバックしてしまう。
お兄ちゃんの、――あの時の背中が――……。
「りの?」
「あ、え、母に脅迫状ですか?」
ドキドキと焦った心が容赦なく莫大な音を鳴らして、上手く周りの声が、現実が掴めなくなった。
「いえ。違うとは思いますけれど、マンションも安心ですが、私の家はもっと安心だからでしょう」
巫女さんの答えになっていない答えに、愛想笑いさえ浮かばなかった。
巫女さんの家は、学園から一番近い高級住宅地で。
広い庭園には、アーチが何個も付けられた小川が流れている様な、和洋折衷な趣で。
24時間、監視しているセキュリティに、最新設備、そして敦盛さんみたいに自室を与えられたエリート集団が二階には集結している。
一階に管理人がいて安心――レベルのあのマンションとは確かに比べ物にはならないかもしれない。
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