自称白雪姫男と七席のテーブル。

2/11
前へ
/57ページ
次へ
一口食べれば死んでしまうような猛毒の林檎が、喉に引っかかって男の自由を奪っている。 恋とは、その猛毒が喉を通り身体中を侵食してしまうようなものである。 男の心は、身体の様に自由に操作出来なくなっていた。 心と体は、それぞれ違う意思の元、親元から離れてしまう。 男は、致死量の毒をパソコンに打ち込んでいた。相手が死んでしまっても構わないような、大事に大事に作っていた毒林檎を。 「お客様、此方、サービスです」 嗚呼。 貴方が、貴方が僕の大事にしていた毒りんごを奪い去って食べてしまった。 それは、毒でしたか? 中毒性の毒でしたか? 銀のフレームの向こうの瞳は、男を見ておらず客を御もてなしするウエイトレスとしての最小限の表情しかしていない。 清潔そうな制服に、ポニーテールの笑おうとしないミステリアスなウエイトレス。 男は、自分が食べるはずだった毒林檎をこの女性に奪われてしまった。 長年つくっていた毒林檎を一瞬で。 これだから、人の感情は複雑なようで、簡単に心変わりしてしまう。
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

121人が本棚に入れています
本棚に追加