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老夫婦がしている地元の人しか来ないこの小さな喫茶店で、彼はいつも異質だった。
いつも、ちがう空間にいるような優雅さでパソコンの前に座っている。
古いログハウスの中に、世界最高級の煙草を吸い、イタリア製のスーツに身を包み、人差し指オンリーでタイピングする彼を、今日も竪毬さんは苦々しく思う。
カランカランと、扉の呼び鈴が揺れると朝9時の合図である。
「いつもの珈琲をいつもの席へ」
男はそう言ってまた扉を締めて、指定席のバルコニーの日陰に置かれた席に座る。
そして煙草に火をつけたのだ。
――今日は左利きだ。煙草を左で持って右手で火をつけている。
ゆっくり吸い込むと、またゆっくり吐きだす。
そして口角を左だけ上げてにやりと笑う。
珈琲を持っていくと既にパソコンを起動し、真っ白い画面に文字を打ちこんでいた。
「どうぞ」
「ありがとう。今日も貴方の髪は黒く滑らかで美しいですね」
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