全てを知る人

25/41
前へ
/316ページ
次へ
「おじいちゃん、正蔵おじいちゃんっていつからあの場所にいるの?」 「ん? 戦後すぐだったかな、まだ学生の正蔵が先代のやっていた時計店の養子としてきたんじゃなかったかな」 正蔵おじいちゃんって養子なんだ。 年が違うせいか若い頃はそれほど仲良しではなかったみたいだけど、私が知る限りおじいちゃんと時計店の正蔵おじいちゃん、骨董品店のおじいちゃんはすごく仲がいい。 「あの頃はそういう奴はたくさんいたよ。まともな家に養子に入れるなんて幸せなほうだ」 「そうなんだ」 現代の私にはあまりぴんと来ない話だけど。 両親を戦争でなくした正蔵おじいちゃんは、手先の器用さを見込まれて時計店に養子に入ったらしい。 そういえば、私が高校の頃に集めたオルゴール、調子が悪くなったときに直してくれたのも正蔵おじいちゃんだった。 そのあとしばらくは佳代と2人でゴッドハンドなんて呼んでいた気がする。 .
/316ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2988人が本棚に入れています
本棚に追加