第1章

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『南棟の305号室、上げときますか?』 そしたら、 『ああ。そうだな。あそこは昨日ご主人が飲み会だったせいで雰囲気最悪だったようだしな』 ってもう一人のおじさんが答えたの。 『10パーセントだけだぞ』 変なこと言うわよね。 送電線の点検なのにどこかの家庭の雰囲気の話をするなんて。 『北棟は良し。西棟を少し下げろ。お前のメンテナンスは雑過ぎる。』 『でも、楽しい方がいいっすよ』 『昨日、注意を受けた。西棟のテンションがおかしいってな。住人を全員ハイにしてどうするんだ。調整が大事なんだ』 若い方はいかにも「若者」って感じの話し方でね。 あ、あなたも大学生だから若者、ね。 ふふ、でもあなたはしっかりしてるわよ。照れないで。 それにベテラン風のおじさんが声を荒げて熱弁してたってわけ。 そのテンションをもっと下げて・・・とかって。 まあ私には良く分からなかったんだけどね。
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