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「見つかった!やっと見つかったよー!!」
「え?」
「ユウ君にもらった指輪見つけたの!」
突然の火事だった。
彼女の実家は木造で、他の家に火が燃え移らなかったこと、家に誰もいなかったことが不幸中の幸いだ。
そうは言っても彼女は自分の育った家の焼け跡で絶望していた。
・・・いや、正確には指輪を落としてしまってから。
「もう見つからないと思った~!」
オレの上げた指輪はサイズが大きすぎたらしく、タイミング悪く、このがれきの中で落としてしまったらしい。
また買ってやるからと宥めたが、絶対に見つけると息巻いて止めない。
毎日出勤前のこの時間に目を皿のようにして探していた。
そうなればオレも付き合わないわけにはいかなかった。
「よかったーよかったー見つかったよ~」
「わかったから、もうどいてくれ・・・」
やっと解放されたオレは彼女の指に再度指輪をはめてやった。
嬉しそうに微笑む彼女。
やれやれ。これでもう毎朝付き合わされずにすむ。
「・・・っていうかなんでお前はこんなところで白い服なんか毎日着てるんだ。汚れるだろ。」
「えーだって花嫁さんの色は白、でしょ」
まさか結婚してくれって言うプレッシャーのつもりか・・・
オレはがっくりとうなだれた。
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