第1章

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僕はその日いつもの電車に乗っていた。 ホームと反対側のドアのそばにもたれかかる。 この通勤時間では、それが最良の場所だった。 電車が発車して何気なく外を見ていて、見慣れない光景に目がとまった。 真っ黒に焦げた家。 崩れかけた屋根。 家の敷地を囲むブロック塀はすすのせいで影のような模様が描かれている。 ・・・火事か。 一人暮らしだし、そんなにニュースは見ない。 近所だけどサイレンの音を聞いた覚えはないし、いつの間に起こったのだろう。 そんなことを思った一瞬の後、 白い服を着た女の姿が庭に見えた。 黒い長い髪をして、白服を着て、庭にしゃがみこんでいる・・・。 何をしているのだろう、と思ったが、その風景は、徐々に加速を始めた電車の後ろへと流されていってしまった。
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