あ、と思う暇もなく、背中があったかくなる

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この間の出来事から私にやたらと仕事を押し付けてくる職場の皆。 中村くんはそんな皆を見て『嫌がらせだろ』と言っていた。 もう中村くんと一緒に何回も帰っているのにこんなに緊張する。 私は重たい鞄のヒモをギュッと握ると中村くんをチラッと見た。 本当にこの人はカッコイイ。 今だって周りの人から見られてる。 こんな人と一緒に歩いてるのが私だなんて、本当に世の中の人達になんて謝ればいいんだろう。 小さくため息をついて周りを見る。 あ、そういえば買い物しないと。 「あ、あの、中村くん」 「ん?」 「買い物して帰るから、先に帰ってて?」 そう言って中村くんに鍵を渡そうとすると中村くんは首を傾げた。 「いや、普通に付き合うけど」 「え?でも悪いし……」 「なんで?いつも住吉が飯作ってくれてるし、こういうのなら手伝う。ていうか、手伝わせてよ」 中村くんはそう言うと私の鞄を自然と奪ってスーパーへ向かった。 「え!?な、中村くん!?」 「すげぇ重いな、これ。どんだけ住吉嫌がらせされてんの?」 「え!?あ、ごめんなさい……?」 何故か謝って中村くんの後についていく。 自然な動きなんだけど、カゴを持つ仕草さえ中村くんがするとカッコイイのは何故だろう。 「何買うの?」 「えっと……、明日休みだから少しだけ多めに買わないと……って違う!!」 「え?何?」 「中村くんに鞄持たせてるんだから、カゴくらい私が……!!」 「ダメ」 カゴを取ろうとすると中村くんにその手を掴まれた。 ドキッとして固まる。 「こういうのは男の仕事。俺が今は一緒にいるんだから頼れよ」 な、なんか中村くん超優しいんですけど!? いや、中村くんは普段から優しかったけど。 でもなんか、特別扱いされてるみたいで嬉しいんだけど……っ。 「ありがとう……」 そう言って俯くと中村くんが少しだけ笑った。 .
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