これが彼に「恋をする」という代償

2/14
622人が本棚に入れています
本棚に追加
/190ページ
「あの……、社長?」 「何?」 「この白衣の人達は一体……?」 「住吉さんの腕の治療をする医者」 さも当たり前のようにそう言い切る社長。 私は数人の医者の方たちに腕を治療されている。 こんな大事になるとは思ってなかった。 「そんなに傷は深くないので痕になる事はまずないと思います」 「どうもすみません……。こんな軽傷者に……」 「いえいえ。雪弥様の婚約者様の身体に傷を残すなどあってはなりませんから」 「こ、婚約者!?」 赤くなって固まる。 すると雪弥くんが後ろから私に抱き着いた。 「良かった」 「雪弥くん!?」 「萌に傷が残らなくて」 優しく腕を撫でられる。 それから頬にキスをされた。 こ、こんな人が多い場所で!? ていうか何この状況!? そもそも私は雪弥くんの婚約者なんて大それた者では……っ!! 医者の人達が去って、社長と雪音さんが何故か微笑みながら部屋を出て行く。 自然と雪弥くんと2人きりになると雪弥くんが息をついた。 「安心した……」 「雪弥くん……?」 「女の子の身体に傷がつくなんて、一番しちゃいけない事だろ?」 「でも今までそれが普通で……」 「じゃあその『普通』を変えないとな」 雪弥くんはそう言うと私に手を差し出した。 「帰ろ?」 「うん」 雪弥くんの手を取って立ち上がる。 階段を下りて玄関で靴を履いていると社長と雪音さんがやって来た。 「もう帰っちゃうの?萌ちゃん」 「雪音さん。はい。お邪魔しました」 頭を下げると雪音さんにギュッと抱き締められた。 .
/190ページ

最初のコメントを投稿しよう!