「ただ、君が好きだから」

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「お久しぶりです、店長」 荒木くんがそう声をかけると、カウンターに立っていた男の人が驚いたように荒木くんを見た。 「荒木くん!?うわ!!凄く久しぶりじゃないか!!」 嬉しそうにそう言う男の人。 それから私に気づいて私に会釈してくれた。 私も返すと優しく笑われた。 「なんだい?デート?いやぁ、大企業に就職したイケメンはモテモテで大変ってか?」 「ちょっと店長、やめて下さいよ。俺別にイケメンじゃ……」 「荒木くんがイケメンじゃないなら世の中にはイケメンなんて存在しなくなるよ?」 「店長相変わらずですね」 楽しそうに笑う荒木くん。 それから私を振り向いた。 「せっかくだからクレープ食べよっか」 「あ、うん。久しぶりに食べたいな」 荒木くんは私の持ってる荷物を自然と奪うと私を自分の方へ引き寄せた。 一気に近くなる距離。 ドキッとして顔が赤くなる。 「住吉何にする?」 「え!?えっと……」 メニューをのぞき込むと更に荒木くんと近くなる。 うわぁ……っ。 ドキドキが聞こえそうでヤバイ。 「いっ、イチゴのが食べたいです!!」 赤くなりながらそう叫ぶように言うと荒木くんはクスクス笑いながら店長さんに口を開いた。 「じゃあイチゴ生クリームと、ブルーベリーで」 「はーい。ちょっと待っててね」 手際よく生地を焼いている店長さんを見て私は少しだけ息をついた。 荒木くん、心臓に悪いよ……。 未だに距離が近いのでドキドキが止まらないし。 ていうかなんで手、繋いだままなの? 「はい、イチゴとブルーベリー。お待たせ」 店長さんから受け取ったクレープは少しだけ温かかった。 美味しそう……。 「あ、お金……」 お金を出そうとすると荒木くんがクレープにかぶりつきながら私を見た。 「俺払ったよ?」 「え!?いつの間に!?」 「住吉が俯いてる間」 .
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