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「そうじゃ……ない……」
「え?」
「離れたいわけじゃない……っ」
荒木くんにしがみついてそう言う。
荒木くんの腕の力が少しだけ強くなった。
「でも、そうしなきゃいけなかった。だってそうしなきゃ雪弥くんは周りから嫌な事を言われてしまう。雪弥くんが周りから傷つけられるのは私、耐えられない……っ」
「住吉……」
「雪弥くんなら、きっと私が『違う』って言ったら、『助けて』って言ったら、必ず助けてくれた。でも、そしたら雪弥くんはどうなる?周りを敵に回すんだよ?」
「中村はそうなってもいいって思ってたはずだ。だから住吉を助けようとしてて……」
「雪弥くんが良くても私が嫌なの!!」
荒木くんを突き放して唇を噛み締める。
どんどん溢れて止まらない涙。
悪いのは、私だけでいい。
傷つけられるのは私一人でいいの。
だって雪弥くんは今まで沢山傷ついてきたんだもん。
これ以上雪弥くんを傷つけてどうするの?
「荒木くんの事も本当は突き放すつもりだったのに、どうして私を信じてくれるの!?荒木くん、周りから酷い事言われるよ!?それでもいいの!?」
「……いいよ」
「嘘だ!!いいわけない!!そんなのおかしいよ!!私なんか庇ったせいで荒木くんの事傷つけるんだよ!?荒木くんは耐えられるの!?」
「うん」
「なんで……っ!!」
「住吉」
再び抱き締められる私。
子供をあやすように背中をポンポンと撫でてくれる荒木くんの手がとても優しかった。
なんで……?
なんで なんで なんで なんで。
私に優しくしても何も返せない。
そんな事、誰が見ても一目瞭然だ。
それなのにどうして荒木くんは……っ。
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