「ただ、君が好きだから」

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「荒木くんは、優しすぎるよ……っ!!あの時何があったのか詳しく聞こうともしない!!それなのに完全に私を信じてくれる!!」 「それの何がおかしいの?」 「あの時佐川さんは泣いてたんだよ!?佐川さんが言った通りだって信じてもおかしく……っ」 「佐川が泣いてたから正しいの?だから住吉は悪いって?そんな目の前だけの情報で判断するような奴に見える?俺の事」 「それは……っ」 「あの時何があったのか、なんで家に帰りたくないのか、聞きたい事は沢山ある。でもそれを聞いて住吉はちゃんと答える?もっと住吉を苦しめるだけじゃん。俺は住吉を守る為にこうしてあの場所から連れ出したのに」 荒木くんの腕の中は安心する。 でもこのまま甘えてちゃいけない。 このまま荒木くんのそばに居れば必ず荒木くんは苦しむ。 そしたら荒木くんはきっと壊れてしまうから……。 「優しくしないで……っ」 そう言うと荒木くんは力を強くした。 「嫌だ」 「なんで……?私に優しくする理由なんて……」 「そんなの、ただ住吉が好きだからに決まってんじゃん」 『好きだから』 その言葉にドキッとした。 これは『友達として』って意味だ。 荒木くんに深い意味なんて……。 そう言い聞かせていると荒木くんが更に口を開いた。 「中村と付き合ったって聞いたから隠し通すつもりだった。でも、無理だ。自分の事傷つけて苦しんでる住吉を見て、中村から離れようとしてる姿見たら、そんなの奪いたくなる」 「え……?」 「『友達として』じゃない。『男として』住吉に見てもらいたい。不謹慎だけどさ、今のこの状況は俺にとってはチャンスなんだ」 「荒木くん……」 「好きだ、住吉。入社式で再会してからずっと、住吉の事が好きなんだ。中村から離れたいなら俺を選べよ」 思わず目を見開く。 そんな……、荒木くんが私を……? ドキドキして苦しくて……。 荒木くんと雪弥くんの顔が頭の中でチラついて息が上手く出来ない。 荒木くんは私を少しだけ離すと優しく笑った。 .
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