電話越しに聞こえる甘い声

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本当に荒木くんって優しいな。 「私も手伝うよ」 そう言って手伝うと荒木くんは優しく笑った。 一緒にご飯を食べていると荒木くんが口を開いた。 「今日仕事、住吉どうする?」 「え?」 「昨日の今日だし、休んだ方がいいんじゃないかなって思って」 荒木くんには何でもお見通しなのかな。 私はギュッと唇を噛んで俯いた。 「ごめんね……」 「ううん。住吉が行きたくないなら家に居ればいいし。家の中のもの好きに使ってくれていいから」 「ありがとう」 「住吉の事守れるなら何でもするから」 そんなストレートに言われたら、なんて反応すればいいのか分からない。 私はもう一度小さくお礼を言うとトーストにかじりついた。 「中村と話、しなくていいの?」 「……話したら雪弥くんは私を信じてくれるかな?」 「そりゃそうだろ。中村は住吉の彼氏……」 「今も彼氏って言えるのかな……?」 離れたくないのに会いたくない。 声が聞きたいのに電話はしたくない。 こんなの、付き合ってるって言えない。 それに雪弥くんを幸せに出来ないから……。 「佐川さんと一緒に居る方が雪弥くんにとって幸せなんじゃないかな……」 そう言うと荒木くんは私の頭に手を置いた。 「それは中村じゃないと分からない」 「え?」 「中村が幸せかそうじゃないかは中村にしか分からないだろ?」 そのまま私の頭を撫でると荒木くんはコーヒーを飲んだ。 「じゃ、俺会社行ってくる」 「あ、うん。いってらっしゃい」 そう言うと荒木くんは一瞬固まってから、少し赤い顔で「行ってきます……」と言った。 .
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