自分ごときの手を、割れ物みたいに扱ってくれる

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「本当に熱下げるなんてな」 「えへへ」 体温計を見て驚く雪弥くん。 私は頭をかきながら照れた。 だって雪弥くんが私に時間くれるって言ってくれたから。 寝てられないよね。 「熱は下がったけど、あんまり動いたらダメだよな」 「大丈夫だよ!!」 「だから、萌の大丈夫は大丈夫じゃない。仕事もないから家でなんかする?」 仕事……。 そう言われてハッとした。 「あ!!」 「え?何?」 「私仕事終わらせてない!!」 焦ってパソコンに向かおうとすると雪弥くんに捕まった。 「仕事なんてない」 「え!?あるよ!!だっていっぱい持って帰ってきて……」 「萌が寝てる間、暇だったから終わらせた」 「……え?」 今、なんて言った? 固まっていると雪弥くんがため息をついた。 「あの人たちのせいで萌との時間邪魔されるなんて許せないから」 「えっと……」 「だから、もう終わってるよ」 そう言うと雪弥くんは私の手を掴んでテーブルの前に連れてきた。 「この束」 「ほんとだ……。終わってる……」 唖然としていると雪弥くんは笑った。 「だから、仕事の事なんて忘れて一緒に遊ぼ?」 そんな可愛い聞き方ずるい……。 私は頷いて俯いた。 「で?何する?」 「雪弥くんは何がしたい?」 「んー……。なんか借りてきて観る?」 「そうする?だったら今から用意するけど……」 「うん。そうしよっか」 私は雪弥くんに笑いかけて用意を始めた。 ・
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