自分ごときの手を、割れ物みたいに扱ってくれる

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優しいのは、雪弥くんの方だ。 こうやって、私みたいな奴の手を本当に大切に扱ってくれる。 私みたいな『くだらない人間』の手を。 「今日の萌、なんかお姫様みたい」 「え?」 「そのドレス、すっごく似合ってるよ」 雪弥くんは優しく微笑むと私の髪に触れた。 「髪の毛解いちゃったんだ」 「あ……。ごめんなさい。せっかくやってもらったのに……」 「ううん。ただちょっと残念」 「残念?」 「うん。だって凄く可愛かったから」 一気に赤くなる顔。 さっきから雪弥くん褒めすぎじゃない!? どうしたの!? 雪弥くんと繋いでない方の手で顔を触る。 頬が凄く熱かった。 「本当は萌を見た瞬間に言いたかったんだけど、いきなり萌が敬語で話し掛けるから驚いちゃって。あ。ていうか、本当に何言われたわけ?」 凄く不思議そうにそう聞いてくる雪弥くん。 私は苦笑いを浮かべた。 だって言えるわけがない。 それに言ったらあの人達可哀想だし……。 そう思っていると雪弥くんが私の手を放した。 そしていきなり私の前に膝まづいた。 え……? 「え!?雪弥くん!?」 雪弥くんは優しく微笑んで私に手を差し出した。 「ねぇ、萌。君は一体、何の絵本から出てきたお姫様なの?」 その言葉に最高に赤くなる。 何を言い出すんだ、この人は。 よくそんな恥ずかしいセリフを……っ。 「俺の事、許してくれるならこの手に手を乗せて?」 許す、なんて 私にそんな偉そうな事出来ない。 そもそも許すも何も雪弥くんは悪くないから。 私は迷わず雪弥くんの手に自分の手を重ねた。 するとその手を優しく引っ張られた。 耳元で囁かれるお礼の言葉。 たったそれだけなのに、私のさっきまでの憂鬱な気分は何処かへ消えてしまった。 ~自分ごときの手を、割れ物のように扱ってくれる~
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