622人が本棚に入れています
本棚に追加
/190ページ
優しいのは、雪弥くんの方だ。
こうやって、私みたいな奴の手を本当に大切に扱ってくれる。
私みたいな『くだらない人間』の手を。
「今日の萌、なんかお姫様みたい」
「え?」
「そのドレス、すっごく似合ってるよ」
雪弥くんは優しく微笑むと私の髪に触れた。
「髪の毛解いちゃったんだ」
「あ……。ごめんなさい。せっかくやってもらったのに……」
「ううん。ただちょっと残念」
「残念?」
「うん。だって凄く可愛かったから」
一気に赤くなる顔。
さっきから雪弥くん褒めすぎじゃない!?
どうしたの!?
雪弥くんと繋いでない方の手で顔を触る。
頬が凄く熱かった。
「本当は萌を見た瞬間に言いたかったんだけど、いきなり萌が敬語で話し掛けるから驚いちゃって。あ。ていうか、本当に何言われたわけ?」
凄く不思議そうにそう聞いてくる雪弥くん。
私は苦笑いを浮かべた。
だって言えるわけがない。
それに言ったらあの人達可哀想だし……。
そう思っていると雪弥くんが私の手を放した。
そしていきなり私の前に膝まづいた。
え……?
「え!?雪弥くん!?」
雪弥くんは優しく微笑んで私に手を差し出した。
「ねぇ、萌。君は一体、何の絵本から出てきたお姫様なの?」
その言葉に最高に赤くなる。
何を言い出すんだ、この人は。
よくそんな恥ずかしいセリフを……っ。
「俺の事、許してくれるならこの手に手を乗せて?」
許す、なんて
私にそんな偉そうな事出来ない。
そもそも許すも何も雪弥くんは悪くないから。
私は迷わず雪弥くんの手に自分の手を重ねた。
するとその手を優しく引っ張られた。
耳元で囁かれるお礼の言葉。
たったそれだけなのに、私のさっきまでの憂鬱な気分は何処かへ消えてしまった。
~自分ごときの手を、割れ物のように扱ってくれる~
最初のコメントを投稿しよう!