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ふと何かを感じて目線を上げる。
「扉…?」
目の前には2つの扉があった。
不思議なことに、ひとつは私と同じくらいの背丈の扉で、もうひとつは膝丈ほどのものであった。
さっきまではなかったような気がするが、もしかしたら眠気のせいで頭が回っておらず、気付くことができなかったのかもしれない。
私の背丈とほとんど同じ…だからきっと、大きい方は、私の扉。
とすれば、この小さな扉は誰の扉であろうか。
私は小さい方の扉に近づき、膝を
ついて扉の向こう側を見てみることにした。
しかしこちらの扉には、鍵穴がある。
ドアノブを回そうとしてもガチッという音しかせず、開けることはできない。
もしかすると、鍵穴の中を覗けば、別の世界が広がっているのであろうか。
私は少しばかり胸を躍らせながら鍵穴を覗き込んだ。
「すごい….」
見えたのは、たくさんの色だった。
赤や黄、緑、青、様々な色の光。
たくさんの色の光の粒がぶつかりあって、まるで踊っているよう。
光の粒の奥底に、別の何かが浮かび上がる。
それは、闇だった。
扉の向こうは、見たこともない不思議な世界のように思えた。
ーわかった、私はアリスなのだ。
好奇心旺盛で、喋るウサギを追いかけて穴から落ちてしまい、不思議な世界に迷い込んでしまったアリスなのだ。
そう思った。
この扉は、私の扉なのだ。
だとすれば、必要なのは、身体が小さくなる薬と、小さな扉の鍵穴にぴったり合う鍵。
でも、この空間には扉以外に何もない。
小さな扉に入るのに必要な薬と鍵は、きっとこっちの扉の中にあるんだ。
私は立ち上がり、自分の背丈ほどの扉のドアノブをゆっくりと回した。
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