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ドナはフィリピンの十九才の娘。
マニラで大学の看護学部に通っているが、
日本人と結婚した叔母のはからいで、
叔母の家にホームスティしながら短期体験留学することとなった。
彼女にとっては初の海外。
日本語はまったく理解できなかったが、
母国語のタガログ語の他に英語が話せた。
ドナとノルミンダは、
成田空港から都内の自宅へ向かう車の中で、
タガログ語で機関銃の打ちあいのように近況を報告し合う。
やがて、
東関東自動車道から首都高に入るとふたりの話も落ち着き、
ドナは車窓から覗ける外の景色にくぎ付けになった。
ビルの合間を縫って走るハイウェイが、
映画に出てくる未来都市のようだ。
それにしても、
奇怪な文字が描かれている屋外看板とそれが立ち並ぶ街の風景は、
とても奇妙に感じる。
もちろん、
なんの看板なのか皆目検討がつかない。
そう言えば成田空港で見た日本の女性たちも、
今まで祖国では見たことも無いファッションを身にまっとっていた。
三宅坂トンネルをくぐりながら、
ドナは一生に一度の冒険が始まっていることを実感した。
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