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それを見送って後部座席のドアを閉め、運転席に乗り込んだ先生。
「ゆっくり運転するから。それでも気分悪くなったら言うんだぞ」
「はい」
そうは言ったものの、もうほとんど調子は良くなっていた。
それは人だかりからはずれたからなのか、座って安静にしていたからなのか、はたまた、"誰か"のせいなのか。
いつの間にか開いていた、きっと先生が開けてくれたのだろうドアの隙間から心地良い風が頬を撫でた。頬を撫でて、髪をさらってく。
「にしてもお前案外ちゃんと学校来てんじゃん。えらいえらい」
そんなことを言ってどうせ先生は笑ってる。昨日会って話しただけだけど、分かるよ。先生は、そういう人。そんなことを、そんな単純なことで嬉しいとか、喜べちゃう人。
そういう、人。
「たまたまだよ。私つい昨日までそんな子じゃなかった。だからきっと先生の想像は案外はずれではないと思う」
「そうかー?だとしても、俺は今日見たお前がお前だと思ってるよ。つうか、正直安心してんだ」
先生がそこまで言った頃、車は学校の正門横の駐車場に差し掛かった。
「安心?」
「っそ。だって自分の生徒に不良がいなくて良かったなーって」
「自分の・・・生徒?」
「そう。俺の、生徒。・・・っさ、着きましたよ2年3組笹川律さんっ」
駐車場の中でも隅っこの、校舎に近いその場所に車を止めて、運転席を降りて後部座席の私側のドアを開けた。
「・・・本当に先生のクラスだったなんて・・・。・・・お疲れ様でした」
「なに、終わり?そんなにやばいのお前・・・何する気?怖いんだけど」
「まあ、まあ。せいぜい頑張ってくださいッス」
「おい律、どこ行く気だ?」
「保健室」
「・・・ほんとだろうな」
「ひっどい・・・疑うなんて・・・」
両手で顔を覆ってみる。
「ごっ、ごめんっ!!ごめんなっ!!」
「分かれば良いんだよ、分かれば。送ってくれてどうもありがとう。バイバイ」
「・・・お前な・・・。・・・まぁ良い。逃げるなら、逃げろ。けどな、俺はしつこいぞ。覚悟しておけよ、律っ」
苦手だなぁ。
こういうタイプは、苦手だ。
できれば関わりたくないタイプ。
まだ他の先生見たいに放っておいてくれたほうが良いのに。
「・・・苦手、だなあ・・・」
屋上で一人呟いた。
・・・困ったなー。
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