幼馴染みと担任と学校。

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「困った、困った」 「何が困ったの?」 「バカな幼馴染みはどうしたものかと思って」 「ひっで。それもしかしなくても俺のこと?」 「さーね」 「それより律、危ないよ、そんなとこ。つか、どうやってそっち行ったの。フェンスあんのに」  私のすぐ後ろ、フェンス越しにまるで昨日の誰かさんと同じことを言ったのは困ったさん第二段。 「なーに、康介。あの人に何か言われたの?珍しいじゃない。授業中だって言うのに。ましてやこんなとこ来ちゃって」 「別に、先生は何も言われてねぇよ」 「・・・まぁいいけどさ。なんで私の言った『あの人』イコール『先生』だって分かったの。私、先生だなんて一言も言ってないけど」 「・・・いやぁ、律さんには敵いませんわ」 「・・・」  敵わない。  それは康介の言ったそれよりも、その何倍もの敵わないを私は康介に抱いている自信があった。  決して口に出すことはないけれど。 「で、何吹き込まれたの?」 「吹き込まれたなんて物騒な。そんな言い方ねぇだろ。あの人、お前のこと思ってくれてんだから」 「思ってくれてる・・・ねぇ・・・」  ゆさゆさ、空中で足を泳がせる。 「・・・ここさ、見えんだな」 「・・・」  ゆさゆさ、ゆさゆさ。 「俺の家も・・・律の、」  ゆさゆさゆさゆさ。 「"産まれた"家も、」  ゆさゆさゆさゆさ、ゆさ。 「"育った"家も」  ゆ、さ。 「・・・今住んでるマンションも」 「・・・見えないよ」 「え?ほら、あそこ。見えない?」 「・・・見えないよ。・・・見えない。どこにも、見えない」 「・・・ご、めん・・・」 「何で、謝るの。康介って、時々変」 「・・・いや、その・・・。・・・ごめん」 「・・・」  "いいよ"じゃない。"許さない"も違う。  そんな風に言われたら、どうしたらいいのか、分からなくなる。それは、許せないからじゃない。許したく、ないから。  そのごめんは、許したくない。  だって"いいよ"と言ってしまったら、それは認めることだから。康介の『ごめん』のその意味を。それはつまり"否定し続けてきた自分"をも認めることになりそうで。  だから、嫌だ。 「もう、謝らないで」  そんな風に、謝らないで。 「・・・分かった」
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