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私のことなんて、ほうっておいてくれれば、いいのに。
『いい。ここがいい』
『滑り台、好きなの?なら、先生と遊ぼっか。先生も滑り台好きだったなー』
『いい、一人であそぶ』
『そんなこと言わないでー。ね?』
『いいっ』
私が滑り台の上でそっぽを向いた、その時だった。
ドシンッ!!
物凄い音がした。
先生も慌ててその音の方へ駆け付けた。
私はそれを滑り台の上からただ、黙って見てた。
『どうしたの!?・・・あら大変っ!!康介君、大丈夫っ!?どこ打った!?』
『あー、だいじょぶだいじょぶ。へへっ、おれ強いからっ』
さっきの音はどうやら南康介がブランコから落ちてゴツン、頭を打った音だったらしい。
『・・・康介君、どうしてこんなところから飛び下りたりしたの?』
『いやあ、かめんライダーになりたくて。ほら、へーんしんって言うときジャンプするじゃん?だから、おれもジャンプしたらなれるかなーって思ったんだ』
『そっか。でも仮面ライダーはみんな大きいお兄さんでしょ?康介君はまだ四歳なんだよね。だから悪者退治はお兄さん達に任せてようよ。それに康介君、仮面ライダーにならなくっても強いから大丈夫!!危ないからもう飛び下りちゃだめだよ』
『わかった!!おれ強いからこんどはすべりだいでやってみる!!』
『よっしゃー!こんどこそへんしんするぞー!』そう意気込んでこちらに向かって走って来た。
『ちょ、康介君!?何にも分かっていないじゃない・・・』
先生も慌ててそれを追いかける。
『りっちゃん、すべりだいかーしてっ』
『いや』
それが、康介と始めてちゃんと交わした言葉だった。
『ねー、おねがいーちょっとだけっ』
『いーや』
第一印象は、何て頭の悪い子なんだろうと思った。
だけど同時に、
『りっちゃんもへんしんみたくない?』
『ぜんぜん』
『もう。おれがへんしんしたらりっちゃんのことたすけられるんだよ』
『・・・えっ?わたしのこと?』
『うんっ!だってりっちゃんいつもかなしそうだから。だけどかめんライダーみたらきっとわらってくれるとおもった。だってせいぎのヒーローだから。みんなをえがおにする、ヒーローだから』
知らなかったのは、私だけ。康介はずっと、私を知っていた。見ていた。
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