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誰も気付かなかった悲しみに一人、気付いてくれていた。
そんな子だった。
出会った時にはもう、そんな子だったんだ。
そんなことを言って屈託のないその笑顔を惜しみなく見せてくれる、そんな子。
第一印象は、バカな子だと思った。
『うんっ!』
ねえ知ってる?
だけど同時に、この日からあんたは私のーーー
「ボーっとしてますなあ。やっぱ体調優れませんかね?」
すぐ後ろからの声にちょっとだけびっくりした。
そこはさっき康介がいたところ。だけど今度は、そこにいるのは康介ではないらしい。
「・・・先生。授業はー?」
「今はお昼休みだよーん。昼一緒に食おうと思って。どう?」
「いやーん。先生サイテー。愛妻弁当でも見せつけにきたの」
「残念ながら俺独り身ですから。んなことよりほらっ、昼飯食おうぜ」
「食おうぜと言われましても」
「・・・お前、まさかの昼なし?」
「まあ。なくても生きていけるしね」
「んなわけにいくかよ。ちゃんと食わないとだめだろ?親は?」
「一人暮らしだし」
「・・・まじか。お前手ぶらだったしな・・・。・・・よし。購買行くぞ、購買。ほら律、こっち来い」
「えー、いいよー、別に」
立ち上がって振り向いて、フェンスにもたれながら抵抗していれば。
「だーめだ。良いから来い」
「あー分かった。分かったから一回離して。そっち行けない」
と、掴まれた腕を一旦解放されるも再び手首を引っ張られお陰様で購買デビューを果たすこととなった。
「今ならもう人もそんな多くないだろ。ほら、好きなの選べよ買ってやるから」
「へー、ここ案外何でもあるんだね」
「だろ?」
「でもこんなにあったら何選んでいいか分かんないよ」
「なんだお前、好きなもんとかないの?」
「好きな・・・んー、ない」
「困ったな・・・」
「じゃあ先生のおすすめでいいよ」
「よし分かった」
「トイレ行くから先行ってるね」
「おう」
先生が購買のおばちゃんにも負けてない声で買い物をする購買を後にして向かったのは屋上へと続く階段を上って上って、屋上の一つ下の階にあるトイレ。ここは恐らく私しか使ってない。かく言う私も大して使わない。へたしたらここの存在すら知らない生徒が大半なんじゃないだろうか。
・・・それにしても。
「変な人・・・」
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