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呟いて階段を上りきり嫌な音の扉を開ければパンを買い終え戻ってきていた先生が座っていた。
「あら。先生愛妻弁当なんてないって言ってたけどちゃんとお弁当じゃない。自分で作ってるの?」
「意外か?」
「いや、先生料理できそうだし」
私も先生と向かい合うように座れば、先生から買ったばかりのそれを手渡される。
「・・・何?これ・・・」
「ん?何って・・・俺のおすすめカブトムシパンチョコ味だ。こっちはクワガタパンどっちも見た目こそ黒いがこっちはクリーム味だ。さらにさらにムシパンシリーズ最新作のモンシロチョウパンイチゴ味だ。っあ、ムシパンってのは昆虫のムシと蒸すの蒸しをかけてある。うまいだろ?俺が昨日提案したんだ。何かさー、始めて見てみて思ったんだけど、なんつうか今一だったんだよなー。ぱっとしねーっつうかさ。だから協力してやったんだ。何気に人気だったそうだ。そのうち動物シリーズ水族館シリーズもと考えている」
「・・・何やってんっすか・・・ここは小学校じゃないんですよ」
「いくつになってもこう言う遊び心は忘れちゃいかんと思うんだよな。うん」
「・・・」
「ほれ、遠慮なくお食べー」
手渡された昆虫達を茫然と眺めていればクワガタが連行され、袋から救出されてしまった。
「ほれほれ」
「んー・・・」
仕方なくモンシロチョウさんとカブトムシ君を手放してクワガタ様をパクリ、一口。
「どう?どう?」
「・・・うん。・・・お、おいしい・・・普通においしいっ」
「だろだろ?良かったー」
「パンなんて久しぶりに食べた。おいしいね」
「ちゃんと食べなきゃだめだぞ」
「んー」
昨日、そして今現在と先生と過ごしてみてその時間の中で思ったこと。
「先生って、康介に似てるんだよね」
「南?俺が?どこら辺?」
キョトン、とした顔で聞き返す。
「そうだなー。お節介なところとか、心配性なところとか、ズルいところとか・・・」
「ズルい・・・?」
「・・・あと、どうしよもなく真っ直ぐなところ」
「真っ直ぐ、か」
「あっ、だけど」
だけど。
「だけど?」
「いいや、何でもないよ」
似てるのは、康介だけじゃ・・・なかったな。
そうだ。
真っ直ぐだというその点だけは康介よりもずっとずっと似てる人を知ってる。
今日は不思議な日。
天気が良くて、風が気持ち良くて、早起きしてちゃんとした時間に学校に登校して。
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