幼馴染みと担任と学校。

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 康介が屋上に来て、先生とお昼を食べた。  本当に、不思議な日だなと、思った。  これからきっと、もっともっと不思議な日常が始まるような。そんな予感がする、そんな日常の余響のような一日はまだまだこれからだと言わんばかりに午後一の始業のベルがなる。 「じゃーね、先生。楽しい時間をどうもありがとう」 「いいえー。それよりカブトとチョウは?食わねーの?」 「うん、クワガタでお腹一杯」  カブトムシとモンシロチョウパンを少し暑くなって脱いだブレザーを畳んだその上に置いてからフェンスを越えた。 「そっか。カブトも中々いけるぞ。食ったら感想きかせろよな」 「分かったよ。・・・これさ、この会話だけ聞かれたらなんか私達そっちの人かと思われちゃうね」 「だなっ」 「あははっ、それって何か面白い」 「律笑ったー」 「ん?何が?」  フェンス越しだった。  それでも分かったのは先生がそんなに嬉しそうに笑うから。 「いやー、笑った方が可愛いよ。断然、可愛い」 「・・・ね、止めようよ。もう」  ごめん。  どんなに私のことを考えてくれたって。 「律?」  そんな顔されたら、もう、笑えない。  先生の前で、もう、笑えない。  その時私は心の底から『しまった』と思った。  けれど気付いた時にはもう、遅かった。  いや、まだ間に合う。  きっと、間に合う。 「やっぱり、もう私に関わらないでよ。めんどくさい・・・」 「なぁ律?お前どうし・・・」 「うざったいんだよ、そう言うの」  ごめん。  ごめん。  ごめん。  私は知ってる。  私に関わったって、ろくなことにならないってことを。 「・・・」 ・・・キィ・・・バタン・・・。  耳障りなその音は、どこか悲し気に泣いていた。  ただ黙って屋上を出た先生。  きっと、もう二度と戻っては来ないだろう。  それで良いんだ。  それで良い。  たくさんだった。  ・・・もう、"あんな思い"をするのは。  あんな・・・。 「律!!」 「・・・せ・・・」 先生・・・?なんで・・・。 「これ、3ホーム全員に宛てて書いたメッセージだ。皆には今日の帰りのショートホームルームで渡そうと思ってたけど。先に渡しとく」  立ち上がって、フェンスの向こうから一枚の紙を手渡される。
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