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教室に入る時、緊張するのかな。それとも怖くなる?先生と約束をしたその晩ベッドの中で考えた。
何度も何度も、考えた。
だけどいざその時を迎えたら案外何てことなかった。教室の扉を開けることも、クラスの子達からの痛々しい視線も、そこに座って居続けることも。何てこと、なかったんだ。
先生は、笑ってた。
困るでも、呆れるでもなく笑ってた。
その日から先生の授業だけは欠かさず出た。
それなのに先生は昼食を私と屋上で食べることを止めなかった。
高校に入学したての頃は康介もよくこうして私とお昼休みのほとんどをともにしてくれていた。けれど私はそれが嫌だった。
康介には康介の友達がちゃんといるはずだから。なにも無理にこんなところにいてほしくなかった。だから康介には『やめてほしい』と理由さえ言うことはしなかったが断った。
教室顔を出すようになって、そのうちに康介をきっかけにクラスメートと話すことも増えていき、クラスに馴染んだ、とまではいかなくってもそれなりに溶け込み始めているのは確かだった。
「笹川さんー俺ここ今日当たるんだけど合ってる?」
差し出すノートに目を見張る。
「・・・どうやったらこんな答えに行き着くの」
「ケンはバカだからな~。俺よりバカなんじゃね?」
「言ったなー!コノヤロー!」
康介とケン君は仲が良い。ケンカするほど仲が良いとはまさにこの二人のために作られたようなものだ。
「いけー!ケンっ!もっとやれー!」
「康介も負けんなー」
こうして始まる取っ組み合いも、それに便乗して飛ばす野次もいつものことだ。最も二人の場合本気でケンカしてる訳じゃないから周りも面白がっているだけなんだけど。
・・・付き合ってられない・・・。
時計を見ればチャイムがなるまでまだ時間があった。
最早私の指定席であるかのような窓際最後尾。その隣は康介の指定席らしいその席を立って教室を出た。
「・・・んなの・・・まじうざ・・・」
教室から一番近いトイレに向かう途中、まさにその目的地から女子数人の声がした。
「あいつ、調子乗ってるよね。男子に囲まれてさ」
「つうかさー、南も南じゃん?幼馴染みだか何だか知らないけどあいつがいるからあの女調子乗るんじゃん」
「ほんとだよね。ねえ?カナ。カナもそう思わない?」
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