病院と過去。

3/12
前へ
/41ページ
次へ
『はい。今の時点ではまだ記憶がどれほど失われてしまったのか。また果たして本当に記憶を失ったのかなど詳しい状況は分かりかねます。検査結果も脳そのものに目立った損傷は見られませんでした。ですが、だからこそ注意が必要です。この高さから落下していくら草花のクッションがあったからと言って完全に無事であるとは考えにくい。・・・何らかの後遺症、先ほど申しましたように記憶障害・・・もっと言うなら再び目を覚ますかどうかも保証はできません。もちろん我々も決して諦めてはいません。ですからどうか彼女を信じて待ってあげてください・・・。今我々にできるのは、それだけです・・・』  医師の告げたそんな言葉は、目の前であんなことがあったその直後、ただでさえ壊れかけていた俺の心を引き裂くには十分すぎるものだった。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加