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それはもしかして、自分自身に言い聞かせたかったのかもしれない。
救われたかったのかも、しれない。
きっと南の立場なら、俺だったら、そうするだろうから。
「・・・どうして律は・・・あんなこと、したんだろうな・・・」
遠くで花が揺れていた。
風にのって、揺れていた。
それは心地良さそうに。
それはそれは、楽し気に。
「・・・律は言ってた。飛び下りる寸前『これはあの子達が望んだことだ』と。律の言った『あの子達』が誰なのかはすぐに分かった」
「・・・」
「それはもちろん、本人達に直接問いただした訳じゃないし、ましてや本人に聞いた訳でもないけど・・・。でも、分かった。俺には、分かった。律の言った『あの子達』は、あの時律と共に教室から姿を消していてさらに律一人を残して教室に入ってきたあの三人」
「どうして、あの三人だって思うんだ?」
「それは、表情。三人が教室に入ってきた時、明らかに顔色がおかしかった。だからきっと一度目の"未遂"が起こることはそれが未遂であるのかどうかは別として、少なくとも知っていたはずだ。その証拠に彼女らは"未遂"が起きたとき、叫ぶでもパニックになるでもなく逃げようとした。実際、俺がそこに駆け付けようとして教室から外に出ようとしたとき俺が使ったのとは反対側のドアから三人はどこかに向かって走り出していたのを見てた。その時はそんなこと、気にしてる暇なんてなかったから掴まえて問いただそうだなんて思いもしなかったけど。だから恐らく・・・律が『望んだことだ』と言ったのはあの三人、もしくは三人の内の誰かに"そうしろ"ないし"そうしろ"まがいのことを言われたのは間違いないと思う。・・・だけどそれだけじゃ何かおかしい。それだけじゃないはずなんだ。それだけじゃ、先生の質問の答えには辿り着けない」
「・・・それだけじゃ・・・」
ない・・・か・・・。
コクリ、ゆっくりと頷いて再び話始める。
悲しみを、振り払うように。
「律は誰かにそうしろと言われたからって素直にはいそうですかと従うような子じゃない。それは先生もよく分かってるはず。もし律がそんな子なら、律は教室に来なくなったりしてない。もし、そうなったとしても、教師からの助言を全て払いのけてそれでも来ないなんてこと、あり得ない」
確かに、南の言う通りだった。
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