先生と幼馴染み。

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 彼女はそう言って小さく笑った。小さく笑って、そこで始めて俺を見た。  フェンス越しでも分かったのはそいつが普通に可愛らしいと言うことと、笑った顔はその数倍可愛いらしいと言うこと。 カシャーン。  フェンスが小刻みに震えた。 「おー。ほんとに越えちゃえるんだ、このフェンス」  フェンスを無くして分かったのは。 「越えちゃえるよー。へへっ、すごい?」  やっぱりお前が可愛らしいってことと、長いと思った髪はやっぱり腰まで伸びていたったことと、それから・・・。・・・それから。 「おー。すごいすごい」 「気持ちこもってないッスよー」 「それよりお前、まじで内緒だからな」 「ん?サボってたこと?それとも、煙草?・・・あっ、両方か」 「分かれば良いんだ」  案外聞き分けが良くて、物分かりも良いってこと。 「お前何年?」  隣にならんでみて改めて思う。背は女子高校生にしては高い方で、時折風になびいて漂ってくるのはシャンプーなのか何なのか、優しい、女の子らしい香りだった。 「今日から二年生」 カシャン・・・。  彼女も俺の隣でフェンスに肘をついて並んだ。  並んで、互いに外を見てた。 「へー。そういや俺が担任すんのも二年のクラスだったな。俺のクラスの生徒だったりしてなー。そんなんだったらウケるな」 「「アハハハっ」」 「どうだろねー」 「で、何組?」 「知らないー」 「・・・今、何て?」 ・・・危うく煙草落とすとこだった。 「だから、自分が何組かなんて知らないよー?だって興味ないし。教室とか行く気無いし」 「・・・それはまた・・・えらい問題児がいたもんだ。俺らが学生の頃にはゴロゴロいたけど今時珍しいな、お前。一年は?去年はどんな感じだったの?」 「去年・・・か・・・。んー・・・屋上にいた記憶しか無いねー。教室に入った記憶なんて皆無だねー」  そんなことを、涼しい顔して言ってのけたから。 「・・・ほんと、容赦ねぇのな、お前」 ・・・あ・・・。  不意にこぼれたのは、自分でも信じられないほど柔らかな、春の日差しにも似た、そんな微笑み。 「先生って、今年からここ来たの?」 「え?あ、あぁ・・・。うん。そうだけど。何で?」 「私のこと、知らないみたいだったから」 「お前のこと?」
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