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『じゃあな』。
そう言って、彼は私の名前を何の躊躇いもなく読んで、急ぎ足で駆けてった。
「変なの」
ポツリ、呟いた言葉は、誰に届くこともなくただ春ののどかな空に溶けてった。
・・・終りのホームルーム・・・か。
制服のブレザーのポケットから携帯を取り出して確認すれば、確かにもうすぐ12:00を回ろうとしていて。
今日は入学式だから学校は午前までで先生の言っていたホームルームが終われば解散だ。
・・・早めに出ようかな。
今日はきっと、新入生とその家族とで校門が混雑することが予想できたから、その団体とかち合わないように一足先に帰宅路に着いた。
玄関までとそこから校門を出るまで。見事なまでに誰とも会わなかった。
初日と最終日はどのクラスも大抵ホームルームが長引くものだ。きっとどのクラスも担任の長ったらしい話から解放されずにいるのだろう。可哀想に。御愁傷様。
校門を過ぎれば少しだけ長い坂道があってここは桜がきれいに咲いてた。まるで桜の花で出来たトンネル。
ヒラヒラと花びらが目の前を踊る。楽しそうに。待ってたしたと春を喜ぶように。
そんな桜ロードを抜ければ曲がり角を曲がって、ここからはずっと川沿いに歩いてく。
河川敷をずーっと歩けば橋が見えてくる。その橋を渡った先に建てられている背の高い、そこそこの外見で、新築感のまだ抜けないそこそこの高層マンション。
その最上階に私の住みかがあった。
だけど今日はどうもすんなり帰る気分になれなくて。
それはこの、春の心地よさのせいにしておいた。
橋を渡ってすぐ、川原に降りてその草むらに寝そべった。
・・・気持ちいー・・・。いっそここに住もうかなー。
「りーつー!!」
・・・あぁ・・・でたよ。
正直こんなにのどかでのんびりした気分の時には会いたくなかった。"あいつ"に限らず、誰にも会いたくなかったのに。
・・・何でこう言う時にばっか見つかるかな・・・。
「うっす、律。こんなところで何してるんだ?」
いつものアホ面ぶら下げて私の隣に胡座をかいて座り込んだ。
「帰れ」
「うっわ!!ひっど!!大事な幼馴染みに対する第一声がそれですか?」
「誰がお前なんか大事にするか」
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