先生と幼馴染み。

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「ひっどいのー。つかさー、折角同じ高校通ってんだから一緒に登下校しようぜー。学年違わねーのにさー。ねーねー、りつー」  今度は膨れっ面になりながら人の腕を掴んで揺さぶった。 「あーも、離せ」  それを振りほどいて、ついでになんかイラッとしたから。 ゴンッ!!  殴っといた。 「イッタ!!何で殴んの!?」 「煩い、黙れ」 「あっ、あとさ、今年はクラスも一緒なんだなー。俺クラス分け見たときすっげー嬉しかったんだっ」 「ふーん。オメデトー」 「なだよなんだよ、他人事だなぁ・・・。律は嬉しくねぇの?」 「嬉しい嬉しい」 「てっきとー・・・」 「だってさー」  だって、さ。  あんたと同じクラスだろうがそうじゃなかろうが、私はそこへは踏み込むつもりはないのだし。  そんなこと聞かれたって分からないよね。  嬉しいとも、嬉しくないとも答えられない、そんな答えの出しようのない質問をされたって。私は戸惑うだけで、悩みようさえ無いのだから。 「『だって』、何?」  康介(こうすけ)の尋ねている恐る恐るな様子は、彼の顔を見なくても良く分かった。 「だって・・・ねぇ?」 「えっ?」 「さて。じゃあ私そろそろ帰るね。そう言うことだから。さようなら」 「えっ!?ちょっ!!待てよっ!!」  もう目と鼻の先にあるマンションを目指し、立ち上がって背を向ければ、彼も慌てて立ち上がり私を追い掛けてきた。 「着いてくんな」 「ちょっと、待ってって。話しておかなきゃならないことがあるんだ」 「・・・何?」  思わずピタリ、立ち止まる。  それは康介がいつになくこんなにも危機迫ったような物の言い方をしたからだ。  いつもは大抵おふざけ満開で、締まりのない顔して話しかけてくるこいつが。ついさっきまで、そうだったこいつが。そんな風に言われたら、聞かざるを得ないよ。 「・・・あの・・・さ・・・」 「・・・」 「あの・・・、その・・・」 「・・・」 「・・・だから、・・・その・・・」 「・・・」 「えーっと・・・」 「いい加減にしろ」 パコーン。 「痛い・・・何でいちいち叩くの・・・」 「人が聞く耳持ってやったのにいつまでもモジモジモジモジ。さっさと言わないともう聞かないよ」 「・・・わーかった!!言う、言うから。聞いてっ」
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