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「…でも。」
「でも?何?」
「優さんずっとモテてきてるから、私じゃ…」
だからモテてないってば。まだそんな事思ってたのかよ。昨日もあんなに言ったのに。どうやって信じてもらうべきか…
「何?」
「物足りないかと…」
「ちょっとオフレコ話していい?ちょっと耳貸して。」
「はい。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
おいおいおいおい!!!
「え??」
「凄いでしょ?優には内緒な。絶対に怒られる。というか、照れさせるかな。」
「…」
「ん?どう?積極的に行く気になった?」
「頑張ってみます、少しずつ…」
え?え?え?何言ったの?まじで森川何言ったんだよ!!!
「うん。応援してるから。それより優何処行った?さっき平川と話してなかったっけ?こっち結構ガン見してたからきっと後で怒られるだろうな。」
「え?見てなかったよ。」
やっぱ気づいてなかったか。そういうとこはほんと鈍感なんだよな。
「結構見てたよ。あれはね、嫉妬の目だね。ギラギラとした色っぽい怒りの目。」
「嘘…」
「嘘だと思ったらすぐに行ってあげな。もしかしたら何処かで泣いてるかも。」
「ちょっと探してきます。」
夕はそう言うと、振り返ることなく廊下を突っ走って行った。
「はあ。世話の焼けるお二人さんだな。」
「悪かったな、手間のかかる連れで。」
俺は今だと思い、ゆっくりと立ち上がり、廊下側の窓からこそっと顔を覗かせた。
「お前、気配消すの不得意なの知ってるの?」
「は?ちゃんと隠せてただろ?」
「途中しゃっくり止めただろ?」
「地獄耳め。」
「彼女は鈍感みたいだね。違うところは敏感なのに、あ…」
「お前後で何か奢れ。」
「はいはい、さっさと探してこいよ。あそこじゃない?いつもの待ち合わせ場所。」
「まだ昼間だってのに。でもとりあえず行ってみるか。あ、日替わりパン3つでいいや。じゃあな。」
「1人1個までなの知らないのか?」
「うるせー。その賢い頭で考えろ。」
俺は急いで昇降口に向かった。きっとあそこにいるはずだ。待ってろよ、夕。
「はあ。可愛い奴ら、ほんとに。」
二人の恋に嫉妬による試練は、意外と効果的なのかもしれない。
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