第1章

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月日が経ち、四人での生活にすっかり慣れた頃、母からナナ宛に手紙が届いた。 あんなお嬢様だった人が勤まるか半信半疑だったが、東北の旅館で住み込みで働いていると書いてあった。 消印を見たら、東北の地名だったので信じがたいが、本当なのだろう。 手紙には自分を肯定するような、言い訳というか言い逃れみたいなことが書き連ねてあった。 ナナは自分の意見をはっきり言うことができるが、弟は愛想が良く、人から嫌がる仕事を押し付けられたりするようなお人好しな性格だった。 母がいなくなったことで、小学生の弟が学校でからかわれたり、いじめを受けていないかと、出て行った直後はそればかりが心配だった。 それなのに、よく自分を弁護することばっかり書くことができるなと、出て行ったときは腹が立つ感情すら芽生えなかったが、手紙を読んでじわじわと怒りが込み上げてきた。
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