第1章

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ナナは感情に任せて、乱暴な字で書き殴る様に辛辣な文章で返事を書いた。 父と兄弟三人がどんな思いで、ここまで励ましあって乗り越えてきたか。 家族を捨て、家を出ていったことは変えられない事実。 父が私たち兄弟三人を、しっかり守って育ててくれた。 貴方が出て行った後は、喧嘩もなく四人仲良く生活をしている。 父が一番苦しかったと思うが、途中で挫折せず、立派に育ててくれた父には心から感謝している。 いまさら会いたいなんて、どの面下げて、どの口が言うのか。 私たちは貴方に会いたいと思わない。 もう貴方が帰る場所はないし、これ以上掻き乱さないで欲しい。 読み返しもせず、封筒に明記されていた住所を宛先に記入した。 書き終わると郵便局に走り、速達で手紙を出した。 これぐらいしか仕返しする術がない。 しばらく怒りが収まらなかったという。 母から手紙が届いたことは父だけに話し、兄と弟には言わなかった。 それっきり母から手紙が届くことはなく、いまはどこで何をしているかも知らないと話してくれた。
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