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手渡された資料には今日の会合で扱われる話題とそれに関する参考資料が書かれている。
その中には統領であるカルデントへの国民からの不満も載せられていた。
「カルデント様、私はカルデント様を信じていますし、尊敬しております!」
「ん……?」
カルデントが資料を見ていると突然従者が声を上げた。
「たとえ国民全てが貴方を非難しようとも、私は、カルデント様を……っ!」
必死に話していた彼女は不意にそれを止める。
カルデントが彼女の頭を撫でたからだ。
「カ、カルデント様……?」
「ルキ、君が僕を尊敬しているのは分かっている。いつも僕の側に居てくれて、ありがとう。」
「そ、そんな……私はカルデント様の、従者ですので……」
「なら、心配するな。」
「え?」
意味を問う従者に、カルデントは背筋を伸ばし、しっかりと決めた顔をつくって言った。
「グランダンドの統領であるこの僕は、完璧だ。必ず国民、いや、世界中の人間の上に君臨する、男だ。そんな男の従者なんだ、何も心配することはない。」
「カルデント、様……そうですよね、私…………信じています。では、食事の準備をしますので、お待ちしておりますね。」
従者は頬を染めながらそう早口に言うと、お辞儀をしっかりしてから部屋を出た。
「…………さて、と。」
そんな様子を微笑ましく思いながら見ていたカルデントは、表情を冷淡なものに変えると、クローゼットの前へ移動した。
その扉をゆっくりと開くと、そこには一目で高価な物だと分かるスーツと――手足を縄で拘束され、猿ぐつわをされた男がいた。
「っ!………っ!!」
その男は目に涙を溜め、カルデントを上目使いに見ながら震えている。
「やあ、ボット・ガーター。いい夢を見れたかい?」
「…………っ!」
極めて優しく、微笑みながら話しかけるカルデントに反して、男――ボットは怯えたようすで震えるだけだった。
「はは、幸せすぎて震えているようだね。よっぽどいい夢を見たのか、よかったよかった。
………それで、僕を愚弄した反省は、出来たかな?」
「………っ!……っ!」
「そうか、なら……」
「……っ!」
全力で首を縦に降るボットに満足そうに言うと、カルデントはその拘束を解いてやり――
「頼んだよ。」
そう、いつのまにか彼の後ろに控えていた、紫の髪の男に言った。
「承知した。」
男はただ、そう応えた――――
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