傲慢者は呪われる―①

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――ギル・トゥルースは苛立っていた。 彼はこのガルダンドの第十位の権力者だ。 ガルダンド国内には有力な権力者が十二名いる。 統領のカルデント・ラッグをはじめとする、副統領であるガット・ベウム、第一区~第十区の区長十人のメンバーだ。 その彼らが集結し、行われる会合、『十二頭会』は年に二回、春と秋に行われる。 しかし、今回はその定期会合ではなく、臨時に開かれる緊急総会だ。 なぜこの場が設けられたのかというと、隣国ミアリードからの貿易要請があったからだ。 今まで外国との関わりを持っていなかった隣国の突然の申し出にどう対応するか、話し合う必要がある。 ――が、今回の最も注目されている話題と言えばもちろん、多発する失踪事件に対しての対抗策を考えることだ。 この議題は、国民の権力者への信頼に関わるものと言える。 それゆえ彼は、今回の会合では統領であるカルデントには真剣に対抗策を考えてもらいたいと思っていた。 しかし、彼はずっと上の空で、出された意見を適当に受け流し、『ではそれで、頼んだぞ。』とだけ言って次の話へ移行させたのだ。 その態度に、ギルは怒りを隠しきれずにいたのだった。 「では次、統領、副統領、その他の区の区長の選出についてだが、先日行った国民投票から、このメンバーのまま、引き続きガルダンドが率いることになった……」 「カルデント統領、少しいいですかな?」 頬杖をつき、手元の資料を流し見ながら言うカルデントの台詞を遮った初老の男は、第十区の区長、パーカー・グリフィーだった。 「何か不満でもあるかな、パーカー君?」 微かに怒りの籠った、不機嫌そうに皆一瞬たじろぐものの、一つ、深呼吸を行ってからパーカーは改めて口を開いた。 「今回の国民投票の結果に、私は意義を申し立てるつもりはありません。無論、カルデント統領に関しても……あなた以外の統領は今のところ考えられない。」 「では、一体何だ。」 「……はっきりと言うならば、なぜこのような大切な会合に、副統領であるガット氏が欠席をしているか、ということです。」 そう、カルデントの右隣、ガットのために設けられている席には彼は座っておらず、もちろん、他の誰かが座っているわけでもない。 カルデントはそんなことか、と小さく息を吐くとパーカーへと視線を向けた。 「ガットは欠席だ。理由もある。」
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