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コツコツと足音が響き、白い壁に吸収されていく。
天井の筒からの白い灯りが、周りの白さを更に際立ていた。
ガルダンド国の首都ガリアンの大きさ、技術を誇るガリアン都市立総合病院。
四棟ある患者棟のうち、左から二番目に位置する第二東棟。
そこは主に、精神的な治療を必要とする患者が入院している。
――その、二階。
「にしてもカート、あんた医者に知り合いがいたのね。」
「情報を集めるなら、人脈をなるべく多く持つことは基本だからね。」
さも意外そう、という訳でもなく、沈黙に耐えかね、適当に話題を提供した、という感じの女性の、腰まで届く桃色の髪は、周りの白に良く映えていた。
そんな彼女の態度に気づいているのかいないのか、青い髪の男は自慢げに答える。
「ふぅん。」
彼女はやはり、興味無さげに返事をした。
この二人は、首都であるガリアンの中心区カルマニアで探偵・兼情報屋を営んでいるカートと、隣町キャルトンに住む探偵のルーシャだ。
今朝方ガリアン都市立総合病院に、身元不明の男性が保護されたという情報を手にした二人は、実際にその男に会うべく、やって来ていたのだった。
――――その道中、ルーシャがカートをいかに出し抜こうかと足止めをしたりまたその逆があったりと、子供のようなやり取りがあったのだが、その事を事細かに説明するなら、果てしなく長くなってしまうので省略する。
病院に着いたルーシャは内心焦っていた。
その男の親族でなければ、なんの接点もない二人が受け入れられるわけがないからだ。
どう説明したところで門前払いは必然だと思っていた。
しかし、それは杞憂だった。
カートが受付員に、何やら札のようなものを見せると、彼女は焦りのような表情を浮かべ、速やかに男の病室の場所を教えてくれたのだ。
あの札に一体何が書いてあったのか、カートに聞いてみるとルーシャは驚くと同時に、納得した。
それは医院長であるキング・クリムゾンによる直筆の許可証だったのだ。
そのお陰でカートはこの病院での情報収集を許可されており、同伴者であるルーシャも同じだった。
「まあ、僕はルーシャより有名な探偵だからね。」
「あーそーですかー」
どや顔で言うカートにそっぽを向くルーシャ。
――その姿はやはり、子供のようだった。
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