The Cool

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資金調達の目処が立たないままに1月が終わろうとしていた。 また、松下さんや架純ちゃんとも連絡を取り合ってはいたが良い情報は無かった。 (なかなか思い通りにはいかねぇなぁ……) そんな1月29日、年末にシメ上げた社長から着信。 「許して頂けるかどうか分かりませんが、今から謝罪に伺ってもよろしいでしょうか?」 俺には断る理由は無かったが、最悪 警察や弁護士同伴という事も考えられる。 それでも『自分がやった事の責任は取る』というガキの頃からの信念に従い、会う事を承諾した。 「午後3時に伺います」 と言ったにも関わらず、社長は午後2時半に1人でやって来た。 俺は仕事をしながら時間を空けて待っている。 なのに30分も早い到着。 それも、まだ仕事をしている俺に声を掛ける。 何故そこで待てないのか? 俺は相手の気持ちや都合を考えられないヤツが大嫌いだ。 だからこそこんな事態になっているのに、それが分からない無神経な社長にイラついた。 会った瞬間に俺の怒りを感じたのだろう。 社長は震えながら分厚い封筒を差し出し、 「これで勘弁して頂けないでしょうか…?」 俺は、 「結局金で解決か!?」 と言い放ち、中身も見ずに差し出された封筒を掴むと、近くにあった仕事車のボンネットに放り投げた。 社長は涙目になりながら、 「他に矢沢さんのお気持ちに添える方法を思い付きませんでした……」 俺は金が欲しいんじゃない。 それなりに仲良く付き合って来た社長だ。 助けられた事もあるし、一緒に酒を飲んだり旅行に行ったりもした。 何度も俺を怒らせたとはいえ、土下座する位の気持ちで来るのなら許そうと考えていたんだ。 それが、結局金か…… 共に俺を怒らせた部下を連れて来なかった事も許せなかった。 「私と河西、150万ずつ、300万あります。 これで何とか勘弁して頂けないでしょうか……?」 「河西のバカは恐くて来れねぇってか?」 「いえ、これは社長の私の責任ですので…… 河西は金が無いので、河西の分も私が立て替えて……」 「バカ野郎!! 金の出所なんか聞いてねぇ!! 帰れ…… 2度とツラ見せるな……」 「ではこれで…?」 「帰れ!!」 .
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