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「はい、いらっしゃいませ。」
穏やかな微笑みを湛えた社長は予想していたようなおじいちゃんではなく、俺より2つ年上のスゴいハンサムな人だった。
更に奥から出て来た奥さんもスゴい美人だったんだ。
これは誇張でも何でもない。
帰りの電車でひとみが、
「スゴい美男美女の夫婦だったねぇ!」
と言ったくらいだ。
しかし架純ちゃんが言った通り、社長はホントにおっとりした人だった。
とてもアメ車屋の社長とは思えないくらい。
端正な顔に常に微笑みを湛え、ゆっくりした口調で優しく話す人だった。
余計な事は一切喋らず、こちらの下らない質問には丁寧に答えてくれた。
お茶(アイスコーヒー)を出してくれた大学時代の同級生だという奥さんも、いかにも人の良さそうな上品な人だった。
俺が勝手に作り上げたアメ車屋社長のイメージはあっさり裏切られたが、社長のトレードマークであろう真っ赤なツナギと、むち打ち症だろうか、首に嵌めた大きなコルセットがファンキーな雰囲気を醸し出していた。
そして社長も奥さんも今時珍しいヘビースモーカーだったんだ。
俺達のような人種にとって、タバコを吸うか吸わないかは特別な意味を持つ。
同じくヘビースモーカーのひとみも奥さんに対して親近感を持ったようだった。
決して逸らす事無く、じっと俺の目を見詰めてゆっくり話す社長に急速に惹かれて行った……
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