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社長は2代目だが、先代の親父さんは社長が小学校2年生の時に亡くなったのだと言う。
そして驚く事に、生活を支える為に小学生のその時点で後を継いだらしい。
今では考えられない話だが 昭和の時代にはあり得る話だ。
「稼がなきゃなりませんからねぇ。
さすがにアメ車はまだ無理でしたから、バイクや自転車修理なんかで生計を立ててました。」
そして、400ccのバイクで小学校に通っていたと笑った。
「先生も何も言いませんでした。
ウチの事情を知ってたからでしょうね。
良い時代だったんだと思いますよ。」
社長は小学校2年生で実質的に2代目になり、それからは旧いアメ車一筋に生きて来たんだ。
それから長い時間、タバコを吸いながらアメ車談義に浸ったんだ。
そして、ひとみと瞳をどちらも『ヒトミ』と呼ぶ俺に社長が不思議そうな顔をした。
それに気付いたシゲが口を開く。
「ホントに偶然なんですけど、ヒロさんの奥さんもボクの彼女もヒトミなんですよ。」
それを聞いた社長が驚いた様子で言った。
「ボクの母親もヒトミなんです!」
「おお~!」
全員から歓声が上がった。
そして思い出したようにひとみが口を開いた。
「この(店の)前の通りも『人見(ヒトミ)街道』っていうんですよね?」
社長が満面の笑みで言った。
「 そうなんですよ!」
またしても全員から歓声が上がった。
そして、俺はさっき社長からもらった名刺を見直し、
「社長の下の名前はセイイチさんって言うんですか!?
ひとみの兄さんもセイイチなんです!」
三度、全員から歓声が上がる。
社長は驚いた後、いつもの穏やかな笑顔に戻り、優しい声で言った。
「こんな事もあるんですねぇ……」
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