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黒いカマロは周囲の観光客に圧倒的威圧感がありながらも美しく流れるようなボディラインを見せ付けるように、V8サウンドを響かせながらゆっくりゆっくり駐車場に向かって行った。
追い掛けて行くと、駐車した車の左ドアから降りてきたのは、ジーンズにアロハシャツ、リーゼントの男だった。
20代後半だろうか。いい男だった。
全てが格好よく見えた。
そして右側の助手席から降りてきたのはポニーテールの綺麗な女。
まるで映画の世界だ。
俺は気後れしながらも、サングラスを掛けてタバコをくわえた男に話し掛けたんだ。
「これ、初代のカマロだよね?」
男はチラリと女を見ると俺の方に向き直り、ニコリと笑って言った。
「そうだよ。ベビーカマロって言うんだ。
好きなの?」
その優しい口調すらが格好良かった。
「うん!」
「そうかぁ。
君もいつか乗れるといいな!」
男は再びニコリと笑うと、スリムなジーンズの尻がカッコいい綺麗な女の肩を抱いて歩き出した。
まるでジェームス・ディーンだ……
俺はポーっとした頭で男を見送ると、いつまでも飽きる事なく、ベビーカマロと呼ばれる車を眺めていたんだ。
気付けばコウジもウインドウから車内を眺めている。
俺はコウジに言った。
「俺、いつか絶対このカマロに乗るからよ!」
コウジがニヤリとして答えた。
「いいねぇ!」
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