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ワイワイ話すのが楽しくて、すっかり本題を忘れていた。
「社長のお客さんの車輌が手に入れば一番いいんですけど、現状では無理って事ですよね?
そこで大阪の車輌なんですが、どうですか?」
社長の顔から笑みが消え、真面目な顔で逆に質問された。
「縁を感じましたか?」
架純ちゃん、松下さんに続き、社長までもが『縁』を口にする。
もちろん分からないではない。
俺が今のハーレーに出逢ったのも運命的な『縁』があったと思う。
しかし、そんな話すら他人からすれば独りよがりな自己満足にしか聞こえないだろう。
まだネットの写真でしか見た事がない俺は、はっきり『縁を感じました』とは答えられない。
そんな俺に社長は繰り返し聞いて来た。
『縁を感じましたか?』
俺はこの時、社長に対して初めて違和感を感じていた。
何か新興宗教のような、『アメ車教』とでも言うような感じに嫌悪感を抱いていたんだ。
欲しかった物に値段が付いて売りに出ている。
それを探し出し、100点ではないがそこそこ気に入り金も用意した。
それで十分『縁』ではないのか?
それとも、旧い車に乗っている人達は、誰もが奇跡のような出逢いを果たしているとでも言うのか?
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