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「こんな車輌(初代カマロに関して)は世界中探しても見つかりませんよ。
もし宝くじが当たって、6億7億出すって言っても買えない車です。
素人さんには分からないかも知れないですけど、車屋の人間が見たら100人が100人腰を抜かすでしょうね。」
俺はその言葉を聞いて、改めてこの車輌の価値を再認識した。
しかし、俺がこの車に惹かれていたのはそこじゃない。
人は人に対して 又は物に対して、純粋に惹かれた時 好きになった時には、損得も理由も考えないものだと思う。
例え不細工でもボロボロでも、好きになった時に打算は無い。
『好きだから好き』
そういう選び方をする人間には後悔が無いんだろう。
(運命的な出逢いって、こういう事を言うのかな……)
その美しい車輌を見つめている俺の側に来たシゲが、珍しく神妙な顔で言った。
「ヒロさん、カマロ買ったら貸してやるって言ってくれたけど、これは借りられないよ…
俺にはこれは乗れない……」
俺にはそんなシゲが可愛くて仕方ないんだ…
「社長……
絶対欲しいんですけど、ボクなんかが乗っていいんですかね?
例えば社長だったり、松下さんや茂だったり、ホントにこの車の価値を分かる人間が乗った方が……」
社長はいつもの静かな声で言った。
「いえ。これは矢沢さんが乗るべき車です。
矢沢さんが引き寄せたんですよ。
長い間商売やってますけど、こんな『縁』は見た事無いですもん。
矢沢さんの車なんですよ。
こいつも矢沢さん以外を受け付けないでしょ?」
「おぉ~~!!」
松下さんとシゲが歓声を上げた。
俺は声を出せば涙が溢れそうで、下を向いて頷くのが精一杯だった。
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