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まるで夢を見ているような気持ちだった。
社長はこの凄い車を俺に譲ってくれると言ってからも、まるで子供のようにはしゃぎながら細部まで説明してくれた。
その様子はムツゴロウさんが犬と戯れている時とそっくりだった。
本当に車が大好きだという事が伝わってくる。
そして、社長は本気でこの車に惚れているんだろう……
社長はダッシュボードを開けて手を入れ、
「これ、触ってみて下さいよ~。
まだ(中敷きの)毛が残ってるんですよ~。
あぁ~、この手触り。
たまんないですね~。」
リアウインドウを指差して、
「見て下さい!
(50年前の)新車時のステッカーが残ってるんですよ~。
たまりませんね~。」
「ほらっ、この(フェンダーの)エッジ!
リプレイス品(アフターパーツ)じゃこのエッジは出ませんよ!
メーカーは何億も掛けて(金)型を作ってますからね。
社外のメーカーが真似をするのは無理なんですよ。
だからメーカー純正は価値があるんです!」
トランクを開けると、古い新聞紙にくるまれた純正のホイールキャップが入っていた。
「ほら、持ってみて下さい。
ねっ!? 重いでしょ?
樹脂じゃなくて鋳物なんですよ~。」
そして、シボレーのマークが入ったそのキャップを見たシゲが言った。
「うわっ! スゲー!」
松下さんが、
「これ4本だけで一財産じゃないですか!?
これって売りに出したらいくら位で取り引きされるんすかね?」
社長がニヤリとして言った。
「1本20万ですかね?」
「おぉ~~!」
俺達4人からどよめきが起きた。
そしてシゲが心配そうな顔で言ったんだ。
「ヒロさん、これはガレージに飾りましょう!
これ付けて乗っちゃダメ!
ヒロさんは絶対どっかに落として来ちゃうから!」
「バカ! 今はもうそんな運転しねぇわ!」
社長がニコニコしながら言った。
「ガレージに飾るだけでスゴいインテリアですよ。
眺めるだけで美味しいお酒が飲めるんじゃないですか?」
「ヒロさん、ガレージの中にカウンターバー作って、カマロ眺めながら飲めるようにしようよ!」
「おっ! それには激しく賛成!」
「あははははー!」
夢のような時間が過ぎて行く……
車の事はよく分からないと言っていた瞳が俺の側に来て、微笑みながら囁いた。
「なんか、男の人って可愛いですね……」
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