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整備記録を見ていた社長が言った。
「昭和64年、平成元年に最後の整備に出して眠らせたようですね。」
俺はそれを聞いた瞬間に思い出した場面があった。
昭和天皇崩御の日、神奈川 藤沢のスナック『夢』のカウンターでコウジと二人で飲んでいたシーンだ。
(本当に『夢』という名のスナックだった)
ママが素っ気なく言った。
『昭和天皇が死んだらしいよ』
「あれっ!? 平成元年?
27年前っていうと、ボクが20歳の年じゃ……」
「あぁ…」
一瞬驚いた後、穏やかな笑顔に戻った社長が言った。
「待ってたんですねぇ…
長い間、暗い倉庫の奥で矢沢さんの事を待ってたんですよ……」
その言葉を聞いた瞬間、再び涙が溢れ出した。
俺は20歳の時、いつかカマロに乗ってやろうと心に決めた。
まさに同じ年、このカマロは前の主人に対する役目を終え、長い眠りに就いたんだ。
全ての出会いが、全ての想いが、全ての出来事が一本に繋がり、俺とカマロの出逢いへと集約されていく……
シゲがポツリと呟いた。
「なんか、映画観てるみたいっすねぇ……」
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