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松下さんが更に続けた。
「今日、皆さんが来る前に社長と長々話したんすよねぇ。
社長は『矢沢さんだから売る気になった』
『矢沢さん以外だったら絶対自分の物にしてた』って言ってましたよ。」
それを聞いたシゲが大声で言った。
「ヒロさん! スゴいじゃないっすかぁ!
あの社長にそこまで認められるってスゴいっすよ!
まったく何なんすかねぇ!?
ヒロさんの人や物、金を引っ張る力って?」
「おい!? 金って言うな!(笑)」
俺はお世辞だとしても嬉しかった。
架純ちゃんから松下さん。
松下さんからイーグルの社長。
更に、東京在住とはいえ、平日にも関わらず俺に付き合ってくれるシゲや瞳。
俺は本当に『人の縁』に恵まれた。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、俺の終電の時間が迫って来た。
そこでシゲと瞳がスマホで時刻表を調べてくれたんだ。
俺はまだ折り畳み式のガラケーだったからね。
「最寄りの中央線の駅まで送るんで、そこから乗り換え無しで○○(俺の最寄駅)まで行く電車がありますよ。」
「マジで!? ○○まで乗り換え無し!?
瞳、ホントか? 茂は酔っ払いであてになんねぇからなぁ。」
瞳もスマホを弄りながら答えた。
「大丈夫です!
『豊田行き』っていうのに乗れば1本で○○に着きます!」
俺は酔った頭で考えた。
(豊田? 豊田って愛知の豊田かな?
この時間になると山梨通り越してあんな方まで各駅停車が行くんだ?
まぁ、瞳まで言うんだから間違いないべ。)
俺はほとんど電車に乗る事が無い。
年に何回か浅草、アメ横に行く時くらいだ。
更に信じられないような方向音痴。
電車の事は分からないが、中央道で山梨→長野→名古屋という流れはツーリングを通して学習していた。
信じるしか無かったんだ……
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