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俺は皆がはしゃいでいる場で、カマロと出逢ってから今まで考え続けていた事を、言葉を選びながら静かに社長に伝えた。
「社長、これはボクの車です。」
社長とシゲが不思議そうな顔で俺を見た。
「この前、ボクが死んだら息子達に譲るって言いましたけど、これはボクの車なんです。
意地悪じゃなくて、息子達には息子達の、いつか出逢うべき運命の1台があるはずなんです。」
社長は静かに頷いてくれた。
「このカマロが出たって聞いた時、悪い事を考えました。
SSを待ちながらタイミングを見て売っ払っちゃおうって。
でも、社長にも出来たんですよね。
ボクには黙って自分の物にする事も出来たし、2千万、3千万で売りに出す事も……
でも、社長はそれをしないでボクに回してくれた…。
皆さん ボクが引き寄せたって言ってくれますけど、これは社長が引き当てた車なんです。
いつかボクが運転出来なくなるか死んだ時、このカマロは必ず社長に返します。
絶対大切にするんで、それまでボクに預けて下さい。」
社長が静かに言った。
「ありがとうございます……」
シゲとひとみは俺を見て静かに微笑んでいた。
翌朝、松下さんからメールが届いていた。
『昨日の矢沢さんと社長のやり取りを聞いて、こちらの胸まで熱くなりました……』
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